"Where are you from?"
- Mizuki Yamabe
- 2016年5月26日
- 読了時間: 2分

オーストラリアに来たばかりのころ、メルボルンで一番大きな書店で、フリンダース・ストリート駅の形をしたポストカードを買おうとしたときのこと。背の高くてお洒落なレジの店員さんが「あなたはどこから来たの?」と親しげに聞いてきた。
「日本から来ました」と答えると、「日本のどこの出身なの?」と聞かれて、返答に困ってしまった。というのも、私の出身地石川県はお世辞にも世界的に知られた地域とは言えず、自己紹介で出身は石川県ですと言うと、こちらにもともと住んでいる人には困ったような顔をされるのが普通だったから。迷った末、「石川県です」と答えると、レジの店員さんが一言。
「石川県ね、村上春樹の小説に出てきたわ」
後にも先にも、こちらに住んでいる人に「石川県から来た」と言って、「ああ、石川県ね、知ってる」というような反応をされたことがないうえ、店員の返答が無駄にかっこよかったので、当時のことは鮮明に覚えているのだが、留学して3カ月がたった今、このことを思い出すにつけちょっと引っかかることがある。それは、どうして「あなたはどこから来たの?」なんて私に聞いたんだろう?ということだ。
当時は、自分がアジア系の顔をしているから、店員は私のことを旅行客だと思って聞いたんだろうと思っていた。しかし実際には、アジア系の顔をしている人でも、オーストラリアで生まれてオーストラリアで育ちました、という人が、こちらには沢山いる(ちなみに、この文章自体、私がある種の偏見を持ってこちらに来たことを如実に表しているので、自分の無学に恥ずかしくなるのだが)。人の見た目だけでは、その人がどんな言語を喋るのか、どこで生まれてどこで育ったのか、旅行客なのか旅行客でないのか、推測がほぼ不可能なのである。
きっとあのときの店員は、私の外見だけから判断して「あなたはどこから来たの?」と聞いたのではなく(その可能性もあるにはあるだろうが)、定番のお土産品であるポストカードを買おうとしたから聞いたんだろうと思う。もしくは、自己紹介の場面と同じような軽いノリで、「どこから来たの?」と聞いたのかもしれない。ひょっとしたら、「オーストラリアのどこ出身なの?」と聞いていたのかもしれない。真意のほどは分からないが、いまだに自分の中で色々と考えさせられる出来事である。
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